勾配というものは一般的には $\nabla f$ のことを意味します。これは $\mathbb{R}^n$ での話ですが、今興味のある球面上で議論するならばどのように定義すれば良いでしょうか。

$\nabla f$ の動径成分は $x\partial_xf$ ですので $\nabla f-x\partial_xf$ とすれば良さそうですね。これを球面上の勾配と呼ぶことにしましょう。以前ウィンターニッツ変換をやったときも、この式は登場しました。今回は、勾配の積分

\begin{align} \int_{S^{n-1}}(\nabla f-x\partial_xf)\omega \end{align}

と、$f$ の重心

\begin{align} \int_{S^{n-1}}xf\omega \end{align}

の関係式を求めます。基本ベクトルを $\{e_i\}$ とおくと

\begin{align} d\sum_{i=1}^ne_if\omega^{e_i}=-\nabla f\omega+x\partial_xf\omega+(n-1)xf\omega \end{align}

が成立します。これに気付いてしまえば簡単ですね。

\begin{align} \int_{S^{n-1}}(\nabla f-x\partial_xf)\omega=(n-1)\int_{S^{n-1}}xf\omega \end{align}

という関係式が得られます。今回はここまで。次回は偶関数成分と奇関数成分への分離ついて考えます。(written by J.Nishigata)

研究80- 勾配の積分と重心の関係式