以前、デコンボリューション後半の議論で円周の族に関する積分変換を考えたことを思い出してみてください。今回は、その時の話題の一般化になります。まずは積分変換を定義しましょう。

\begin{align} &\mathscr{V}_if:\mathbb{R}^+\times S^{n-1}\times\mathbb{R}^n\ni(r,q,z)\mapsto\mathrm{pv}\int_{S^{n-1}}\dfrac{\{1-\langle q,x\rangle\}\{x-\langle q,x\rangle q\}}{\{1-\langle q,x\rangle^2\}^{i/2}}f(r x+r q+z)\omega,\\ &\mathscr{S}_if:\mathbb{R}^+\times S^{n-1}\times\mathbb{R}^n\ni(r,q,z)\mapsto\mathrm{pv}\int_{S^{n-1}}\dfrac{f(r x+r q+z)}{\{1-\langle q,x\rangle^2\}^{(i-2)/2}}\omega \end{align}

このような積分変換を $i=2,4,\ldots,2\lfloor n/2\rfloor$ に対して定義します。見ての通り、$\mathscr{S}_2f$ が以前議論した $\psi$ の一般化ですね。したがって目的も同じで、$\mathscr{S}_2$ の反転公式を導くことです。

何となく感付いているかもしれませんが、$i=2$ の式から帰納的に $i=2\lfloor n/2\rfloor$ へ向かって計算を進めていくことになります。この方針の意図は何でしょうか。

\begin{align} [0,\pi]\times \partial S_q\ni(\varphi,x)\mapsto x\sin\varphi+q\cos\varphi \end{align}

によって積分を $[0,\pi]\times \partial S_q$ へ引き戻してみましょう。

\begin{align} &\mathscr{V}_if=\int_0^{\pi}\bigg\{\int_{\partial S_q}x\sin^{n-i-1}\varphi(1-\cos\varphi) f\omega^q\bigg\}\,d\varphi,\\ &\mathscr{S}_if=\int_0^{\pi}\bigg\{\int_{\partial S_q}\sin^{n-i}\varphi f\omega^q\bigg\}\,d\varphi \end{align}

$n$ が偶数の場合には $\mathscr{V}_nf$ は円周上のヒルベルト変換になります。このように、最終的にヒルベルト変換へ関連付けて $f$ を計算するために関数列を定義しているわけです。今回は定義だけですがここまで。次回は導関数を計算します。(written by J.Nishigata)

研究77- 球面の族に関する積分変換