球面ラプラシアンの冪級数というものは

\begin{align} A=\sum_{i=0}^m\alpha_i(\Delta^S)^i \end{align}

を指します。今回は、この作用素の零点を調べます。まず $A$ の特性方程式を定義しましょう。

\begin{align} E_A=\sum_{i=0}^m\alpha_i\lambda^i \end{align}

この特性方程式が解 $\lambda=\lambda_j$ をもつと仮定します。$f\in H^j$ に対して

\begin{align} Af=\sum_{i=0}^m\alpha_i(\lambda_j)^if=E_A(\lambda_j)f=0 \end{align}

すなわち $j$ 次の球面調和関数は $A$ の零点になります。では、逆の命題はどうなるでしょうか。$f$ を $A$ の自明ではない零点としましょう。$f$ を直交分解して

\begin{align} f=\sum_{i=0}^{\infty}f_i,\ f_i\in H^i \end{align}

としておきます。

\begin{align} Af=\sum_{i=0}^m\sum_{j=0}^{\infty}\alpha_i(\lambda_j)^if_j=\sum_{j=0}^{\infty}E_A(\lambda_j)f_j \end{align}

ですので任意の $j$ に対して $E_A(\lambda_j)f_j=0$ が成立します。$f$ は恒等的に零ではないので、或る $j_0$ が存在して $E_A(\lambda_{j_0})=0$ が成立します。

以上の命題をまとめると、「$A$ が自明ではない零点をもつことと、$E_A$ が解 $\lambda_j$ をもつことは同値である」となります。

なお、この命題は偶奇に分けても成立します。ここで偶奇と言っているのは

\begin{align} &f(x)=f(-x)\Longleftrightarrow f:\ \text{even function},\\ &f(x)=-f(-x)\Longleftrightarrow f:\ \text{odd function} \end{align}

という意味で、例えば「$A$ が自明ではない偶関数の零点をもつことと、$E_A$ が偶数次の解 $\lambda_j$ をもつことは同値」が言えます。今回はここまで。次回は半球面一般コサイン変換のラプラシアンを計算していきましょう。(written by J.Nishigata)

研究71- 球面ラプラシアンの冪級数の零点