前回のウィンターニッツ変換の最初に定義した $\nu$ という関数は何なのか気になった方もいるでしょう。今回は $\nu$ の意味に関して考察してみます。

まず、微分連続な関数 $f:S^{n-1}\to\mathbb{R}$ を与えます。$f(x)x$ での接ベクトルを考えましょう。

$x$ に直交する単位ベクトル $\tilde{x}$ をとり、回転微分 $\partial_{x\tilde{x}}$ を $f(x)x$ に掛けてみます。

\begin{align} \partial_{x\tilde{x}}(f(x)x)=(\partial_{\tilde{x}}f)x+f(x)\tilde{x} \end{align}

これが接ベクトルですね。この接ベクトルと $\nu$ との内積を計算します。

\begin{align} \bigg\langle(\partial_{\tilde{x}}f)x+f(x)\tilde{x},\dfrac{\alpha fx+(\partial_xf)x-\nabla f}{\sqrt{(\alpha f)^2-(\partial_x f)^2+\|\nabla f\|^2}}\bigg\rangle=\dfrac{\alpha f\partial_{\tilde{x}}f-f\partial_{\tilde{x}}f}{\sqrt{(\alpha f)^2-(\partial_x f)^2+\|\nabla f\|^2}} \end{align}

この値は $\alpha=1$ のとき零になります。したがって $\alpha=1$ のときの $\nu$ は $f(x)x$ の単位法線ベクトルになっているわけですね。

また、$f$ に $1/\alpha$ 乗の重みが付けられている場合は、$f(x)^{1/\alpha}x$ の接ベクトルは

\begin{align} \partial_{x\tilde{x}}(f(x)^{1/\alpha}x)=\dfrac{1}{\alpha}f(x)^{1/\alpha-1}(\partial_{\tilde{x}}f)x+f(x)^{1/\alpha}\tilde{x} \end{align}

となるので、$\nu$ との内積は零になります。今回はここまで。次回も $\nu$ を使った積分変換の話です。(written by J.Nishigata)

研究68- 動径関数の単位法線ベクトル場