前回開口数の上限値は $1$ である、という説明をしましたが、顕微鏡分野、中でも特にウェットに観察するような生物顕微鏡分野では $1$ を超える開口数を目にする機会も多いのではないでしょうか。この原因は理論と実験の誤差という類のものではなく理論的に修正されるべきものです。

今回はこの修正をやってみましょう。

屈折率 $n$ から $\tilde{n}$ に変化する境界上に $dS$ をとりましょう。$dS$ の法線方向を極とする球面極座標表示で、入射側の輝度分布を $I(\theta,\phi)$ 屈折側の輝度分布を $\tilde{I}(\tilde{\theta},\tilde{\phi})$ とおきましょう。

エネルギー保存の式を書くと

\begin{align} I(\theta,\phi)\sin\theta\cos\theta\,dS\,d\theta\,d\phi=\tilde{I}(\tilde{\theta},\tilde{\phi})\sin\tilde{\theta}\cos\tilde{\theta}\,dS\,d\tilde{\theta}\,d\tilde{\phi} \end{align}

屈折の法則 $n\sin\theta=\tilde{n}\sin\tilde{\theta}$ を使って式を簡単にしましょう。外微分を計算すると $n\cos\theta\,d\theta=\tilde{n}\cos\tilde{\theta}\,d\tilde{\theta}$ が成立します。$d\phi=d\tilde{\phi}$ は明らかですね。これらを用いるとエネルギー保存の式は

\begin{align} \dfrac{I(\theta,\phi)}{n^2}=\dfrac{\tilde{I}(\tilde{\theta},\tilde{\phi})}{\tilde{n}^2} \end{align}

となります。残りの計算は前回と同じです。

\begin{align} \mathrm{NA.}=\dfrac{\tilde{n}}{n}\sin\tilde{\theta}_0 \end{align}

開口数の上限値は $\tilde{n}/n$ であることが分かりました。この屈折率の比が $1$ よりも大きければ開口数は $1$ よりも大きい値をとります。

今回はここまで。次回は焦点深度の話をします。(written by J.Nishigata)

光・波動37- 屈折率を考慮したアッベ限界について