前回までで計 4 本の電磁場に関する方程式が得られました。

\begin{align} &\mathrm{div}B=0,\\ &\partial_tB=-\mathrm{rot}E,\\ &\varepsilon_0\mathrm{div}E=\rho,\\ &\mathrm{rot}B=\mu_0 j+\varepsilon_0\mu_0\partial_tE \end{align}

未知な関数は $B,E,\rho,j$ で方程式の本数と整合していますので、これらの方程式で電磁場は完全に記述できます。この方程式系をマクスウェルの方程式と呼びます。さて、まず何をやるかというと、2 式と 4 式の $B,E$ を分離しましょう。

2 式を時間微分 4 式に $\mathrm{rot}$ を掛けて電場を消去すると

\begin{align} \mathrm{rot}\,\mathrm{rot}B+\varepsilon_0\mu_0\partial_t^2B=\mu_0\mathrm{rot}j \end{align}

逆に 2 式に $\mathrm{rot}$ を掛け 4 式を時間微分して磁束を消去すると

\begin{align} \mathrm{rot}\,\mathrm{rot}E+\varepsilon_0\mu_0\partial_t^2E=-\mu_0\partial_tj \end{align}

分離できましたね。左辺の $\mathrm{rot}\,\mathrm{rot}$ の計算が厄介そうな雰囲気がありますが、例えば第 1 成分だけ入った関数で計算すると

\begin{align} \mathrm{rot}\,\mathrm{rot} \begin{pmatrix} a\\ 0\\ 0 \end{pmatrix}&=\mathrm{rot} \begin{pmatrix} 0\\ \partial_3a\\ -\partial_2a \end{pmatrix}= \begin{pmatrix} -\partial_2^2a-\partial_3^2a\\ \partial_1\partial_2a\\ \partial_1\partial_3a \end{pmatrix}= \begin{pmatrix} \partial_1\partial_1a\\ \partial_1\partial_2a\\ \partial_1\partial_3a \end{pmatrix}- \begin{pmatrix} \Delta a\\ 0\\ 0 \end{pmatrix} \end{align}

となることから分かるように $\mathrm{rot}\,\mathrm{rot}=\mathrm{grad}\,\mathrm{div}-\Delta$ であり 1 式と 3 式が使えます。

\begin{align} &-\Delta B+\varepsilon_0\mu_0\partial_t^2B=\mu_0\mathrm{rot}j\\ &\dfrac{1}{\varepsilon_0}\mathrm{grad}\rho-\Delta E+\varepsilon_0\mu_0\partial_t^2E=-\mu_0\partial_tj \end{align}

これらを $B,E$ の微分方程式としてみると、斉次微分方程式を考えるべきでしょう。

\begin{align} &-\Delta B+\varepsilon_0\mu_0\partial_t^2B=0\\ &-\Delta E+\varepsilon_0\mu_0\partial_t^2E=0 \end{align}

全く同じ方程式が得られました。これを波動方程式と呼びます。真空中では電子が存在しないため電荷密度と電流密度は共に零ですので、この斉次方程式は真空の場合のマクスウェル方程式から得られると考えてもよいでしょう。今回はここまで。次回は波動方程式の定常解を調べていきます。(written by J.Nishigata)

光・波動15- マクスウェル方程式と波動方程式