連続な自乗可積分関数 $f,g$ に対して

\begin{align} (f\ast g)(y)=\int_{\mathbb{R}}f(y-x)g(x)\,dx \end{align}

が定義できます。これを畳込み積分と呼びます。畳込み積分は信号処理や画像処理に頻出する重要な演算です。しかし、ぱっと見、あまり計算したくないですね。すべての $y$ の値に対して積分を実行しなければなりません。これを簡単にするのが今回のテーマの畳込み定理です。

$f,g$ がさらに絶対可積分であれば、フーリエ変換を定義できます。フーリエ変換の積を計算すると

\begin{align} \mathscr{F}f(z)\mathscr{F}g(z)&=\int_{\mathbb{R}}g(x)e^{-2\pi ixz}\,dx\int_{\mathbb{R}}f(y)e^{-2\pi iyz}\,dy\\ &=\int_{\mathbb{R}}g(x)e^{-2\pi ixz}\bigg\{\int_{\mathbb{R}}f(y-x)e^{-2\pi i(y-x)z}\,dy\bigg\}\,dx\\ &=\int_{\mathbb{R}}\bigg\{\int_{\mathbb{R}}g(x)f(y-x)e^{-2\pi iyz}\,dy\bigg\}\,dx\\ &=\int_{\mathbb{R}}\bigg\{\int_{\mathbb{R}}g(x)f(y-x)e^{-2\pi iyz}\,dx\bigg\}\,dy\\ &=\int_{\mathbb{R}}(f\ast g)(y)e^{-2\pi iyz}\,dy \end{align}

このように、畳込み積分もフーリエ変換可能になり

\begin{align} \mathscr{F}f(z)\mathscr{F}g(z)=\mathscr{F}(f\ast g)(z) \end{align}

という等式が成立します。これを畳込みの定理と呼びます。この定理を使うと、畳込み積は、スペクトル空間では簡単な数の積(通常の積)となり、非常にシンプルになります。

信号処理や画像処理で登場する畳込み積分は、必ずと言っていいほどスペクトル空間で実行されます。その根拠は、シンプルになるからではなく計算量が減るからです。フーリエ変換の高速化と畳込み積分の高速化の話題は別の機会に話しましょう。

次回は、実空間とスペクトル空間の対応関係についてお話します。(written by J.Nishigata)

フーリエ10- フーリエ変換で楽々畳込み積分