前回述べた前半の命題を解決しましょう。まず、$\partial\Omega$ を弧長表示します。

\begin{align} a:\mathbb{R}\to\partial\Omega,\ a(t)=a(t+L),\ \|\partial a\|=1 \end{align}

$a$ の向きを正とすれば、外向きの単位法線ベクトルは $-R_{\pi/2}\partial a$ となります。$(a(t_1),a(t_2))\in A$ に対して

\begin{align} a(t_1)-a(t_2)=-\|a(t_1)-a(t_2)\|R_{\pi/2}\partial a(t_1) \end{align}

が常に成立することが前提条件ですね。このときに $\Omega$ が定幅であることを示せば良いです。前提条件の両辺に $\partial a$ を掛けて

\begin{align} \langle a(t_1)-a(t_2),\partial a(t_1)\rangle=0 \end{align}

と変形しておきます。$\partial a$ は弧度表示しておきましょう。

\begin{align} \partial a(t)=e(\xi(t)) \end{align}

このようにすると、外向き単位法線ベクトルは $e(\xi(t)-\pi/2)$ となり統一感がありますね。$a(t)$ を $\{e(\xi(t)),e(\xi(t)-\pi/2)\}$ で直交分解してみましょう。

\begin{align} a(t)=C_1(t)e(\xi(t))+C_2(t)e(\xi(t)-\pi/2) \end{align}

前提条件を書き換えると

\begin{align} &\xi(t_1)-\xi(t_2)=\pi,\\ &\langle C_1(t_1)e(\xi(t_1))+C_2(t_1)e(\xi(t_1)-\pi/2)-C_1(t_2)e(\xi(t_2))-C_2(t_2)e(\xi(t_2)-\pi/2),e(\xi(t_1))\rangle=0 \end{align}

すなわち $C_1(t_1)+C_1(t_2)=0$ となります。後は計算するだけです。

\begin{align} d(C_2(t_1)+C_2(t_2))=\partial C_2(t_1)\,dt_1+\partial C_2(t_2)\,dt_2 \end{align}

ここで $a(t)$ の直交分解の式を微分して得られる $\partial C_2=C_1\partial\xi$ を右辺に用いて

\begin{align} d(C_2(t_1)+C_2(t_2))=C_1(t_1)\partial\xi(t_1)\,dt_1+C_1(t_2)\partial\xi(t_2)\,dt_2 \end{align}

$\xi(t_1)-\xi(t_2)=\pi$ より $\partial\xi(t_1)\,dt_1=\partial\xi(t_2)\,dt_2$ なので

\begin{align} d(C_2(t_1)+C_2(t_2))=C_1(t_1)\partial\xi(t_1)\,dt_1+C_1(t_2)\partial\xi(t_1)\,dt_1 \end{align}

したがって前提条件より $d(C_2(t_1)+C_2(t_2))=0$ すなわち $C_2(t_1)+C_2(t_2)=\mathrm{const.}$ が成り立ちます。以上で $\Omega$ が定幅であることが示せましたね。今回はここまで。(written by J.Nishigata)

研究130- 命題 a) の証明