$\Omega$ を定幅 $c$ としましょう。定幅ということはすなわち、どのような向きに影をとったとしても影の長さは $c$ となります。

影の測度のことを外測と呼びます。外測から $\Omega$ の周の長さを測ってみましょう。

$p\in S^1$ 方向に光を当てて影を作るとき、光の当たっている $\partial\Omega$ 上の点 $x$ から影へおろした垂線は、$x$ と影上の点を $1$ 対 $1$ に対応させます。この対応によって $x$ での $\partial\Omega$ の線素 $ds$ はどのような影になるでしょうか。

$x$ での $\partial\Omega$ の外向き単位法線ベクトルを $\nu$ とすると、$-\langle p,\nu\rangle\,ds$ が影の測度ですね。

ここで $\langle p,\nu\rangle\le 0$ の範囲で $p$ の向きを変化させて積分してみます。

\begin{align} \bigg(\int_{-\pi/2}^{\pi/2}\cos\theta\,d\theta\bigg)\,ds=2\,ds \end{align}

これは影を一周積分したときに、線素 $ds$ が作り出す影の総和となっています。したがって上の式を $\partial\Omega$ 全体で積分したものは影の一周積分値 $2\pi c$ に等しくなります。

\begin{align} 2|\partial\Omega|=2\pi c \end{align}

$\Omega$ の周の長さを外測で測ることができました。続いて $\Omega$ の面積を周長で評価します。

\begin{align} 4\pi|\Omega|\le |\partial\Omega|^2 \end{align}

この不等式は等周不等式と呼ばれるもので、等号の成立は $\Omega$ が円の場合に限ります。証明は検索すれば山ほど出てくるのでここでは割愛しますが、この不等式を使うと

\begin{align} |\Omega|\le \dfrac{\pi c^2}{4} \end{align}

という評価が成り立ちます。自明ですが、等号成立は $\Omega$ が円の場合に限りますね。今回はここまで。(written by J.Nishigata)

研究128- 定幅な凸体の面積評価