一般的な画像には理論実験とは異なりスペクトル全体に渡り擬ホワイトノイズが発生しています。したがって、弱値として観測できているものは、STFT不確定性とノイズの混在したものとなっています。

このようなデータ解析は非常に困難です。少なくともスペクトル空間上で議論をしてしまうと、不可能に思われるでしょう。

我々のデコンボリューション(WVR法)が、どのような仕組みでこの問題を解消しているかもう一度考えてみましょう。

コスト関数の最小値問題、ヒルベルト変換を通してノイズの問題を解消しているポイントはありません。問題解消のポイントは、ヒルベルト変換の径方向へ積分平均するタイミングです。

或る径でスライスをとったときの画像には、ノイズ問題を解消するようなピクセル値の偏差はありません。しかし、偏差をとる方向を空間方向ではなくヒルベルト変換の径方向へ変えると面白いことが起きます。

ノイズ成分の偏差は変わらずである一方、シグナル成分は正解のシグナル値に向かって偏差します。簡単に説明すると、軸をとる向きによってノイズが減少するということですね。

これによって我々のデコンボリューションはノイズの問題を回避しています。一旦デコンボリューションの話題はこの辺りで中断して、次回から数学の話題(ポンペイユの逆問題)をやっていきます。(written by J.Nishigata)

研究126- ノイズに埋もれたシグナルの抽出