ブラインド-デコンボリューションの研究は 1970 年前後から行なわれていますので、これまで多くのアルゴリズムが報告されています。ここでは皆さんがご存じであろう有名なものを扱いたいと思います。

Ayers Dainty デコンボリューション(以下、AD デコンボリューションという)を紹介しましょう。多くのブラインド-デコンボリューションはニュートン法のような反復処理により解を求めるという方針をとります。AD デコンボリューションも例外に漏れず反復処理によるデコンボリューションです。

まず、反復処理の初期値として、初期の推定画像と推定 PSF を定義します。一般的には光学像 $g$ を初期の推定画像 $f_0$、規格化された非負のランダムな分布関数を初期の PSF $k_0$ として採用します。

$k_0$ のブラーが掛かっているとして被写体を計算してみましょう。

\begin{align} f^0=\mathscr{F}^{-1}[\mathscr{F}g/\mathscr{F}k_0] \end{align}

$f^0$ に対してコストを定義します。$f^0$ のとる値の中で負の値の総和を計算して、その絶対値をコスト $E_0$ としましょう。関数 $f^0$ の負のピクセルを零埋めした関数を $\tilde{f}^0$ とおき

\begin{align} f^1=\tilde{f}^0-\dfrac{E_0}{N} \end{align}

のように新しい関数 $f^1$ を定義します。ここに $N$ は全体の画素数を意味します。$f^0,f^1$ を比較してみましょう。画素値の総和は互いに一致しますね。一方、$f^1$ に対しても $f^0$ と同様にコスト $E_1$ を定義してみると、$E_0 \ge E_1$ が成り立ちます。

$f^0\mapsto f^1$ の手順を繰り返すことにより $f^0\mapsto f^1\mapsto f^2\mapsto\cdots$ という関数列とそれぞれのコスト $E_0,E_1,E_2,\ldots$ という数列が得られます。コストに閾値を設定して、初めて閾値を下回ったときの関数 $f^i$ を推定画像の更新値 $f_1$ として採用します。

$f_1$ から PSF を計算してみましょう。

\begin{align} k^0=\mathscr{F}^{-1}[\mathscr{F}g/\mathscr{F}f_1] \end{align}

$k^0$ に対しても $f^0$ のときと同じ一連の処理を実行して PSF の推定値を更新します。以上で $(k_0,f_0)\mapsto(k_1,f_1)$ という $1$ 回目の反復処理が完了します。これを何度も繰り返していくアルゴリズムが AD デコンボリューションです。

なお、繰り返し回数は PSF 側のコストをモニタリングして決めるようです。今回はここまで。次回も従来技術の紹介です。(written by J.Nishigata)

研究91- 従来のブラインド-デコンボリューションについて、その１