前回 $\zeta$ の評価は終わっているので絶対値評価は簡単です。$a < x < y_1$ のとき

\begin{align} &|\zeta|\le(-[1]+[n])\ \text{for even }n,\\ &|\zeta|\le -[1]\ \text{for odd }n \end{align}

$[n]$ は零以下ですから $|\zeta|\le -[1]$ という評価が成立します。$\kappa$ の定義の $2$ 番目の性質を使うと

\begin{align} -[1]=\eta(y_1)|K(x,y_1)|=\eta(y_1)\bigg|\dfrac{1+(x-y_1)\kappa(x,y_1)}{x-y_1}\bigg|\le\dfrac{(1+c_0)\eta(y_1)}{|x-y_1|} \end{align}

したがって

\begin{align} |\zeta|\le\dfrac{(1+c_0)\eta(y_1)}{|x-y_1|} \end{align}

続いて $y_i < x < y_{i+1}$ のとき

\begin{align} |\zeta|\le\big|-[i]+[i+1]\big|\le \big|[i]\big|+\big|[i+1]\big| \end{align}

同様に $\kappa$ の性質を使って

\begin{align} |\zeta|\le\dfrac{(1+c_0)\eta(y_i)}{|x-y_i|}+\dfrac{(1+c_0)\eta(y_{i+1})}{|x-y_{i+1}|} \end{align}

最後に $y_n < x < b$ のとき

\begin{align} &|\zeta|\le(-[1]+[n])\ \text{for even }n,\\ &|\zeta|\le [n]\ \text{for odd }n \end{align}

ここに $-[1]$ は零以下であり

\begin{align} |\zeta|\le\dfrac{(1+c_0)\eta(y_n)}{|x-y_n|} \end{align}

以上で絶対値評価が完了しました。今回はここまで。次回は拡張ヒルベルト変換の単射性を題材にして $\zeta$ の性質を使ってみましょう。(written by J.Nishigata)

研究29- 積分核の級数の絶対値評価