前回は

\begin{align} D(\alpha)=b_1+\sum_{i=0}^{\infty}\alpha_id_i=0 \end{align}

のように、非常に強い条件を付けたのですが、今回はこの条件を弱めます。評価すべき式を復習すると

\begin{align} \bigg(a_1+\sum_{i=0}^{\infty}\alpha_ic_i\bigg)\langle 1\rangle_k=\psi+\langle D(\alpha)\rangle_k \end{align}

の右辺の第 $2$ 項でしたね。この項の絶対値が最小になるように $\alpha$ を決めればよさそうです。コーシーの不等式を使えば

\begin{align} \big|\langle D(\alpha)\rangle_k\big|\le\bigg\{\int_0^1XDk(X)^2\,dX\bigg\}^{1/2}\bigg\{\int_0^1X\psi(rX,y)^2\,dX\bigg\}^{1/2} \end{align}

上から評価できます。したがって

\begin{align} \bigg\{\int_0^1XDk(X)^2\,dX\bigg\}^{1/2} \end{align}

を最小化するような $\alpha$ を選べば最良であるかは別問題としても目的には近づきます。最小値問題の解法は最小二乗法を使えば簡単でしょう。

以上のように $\alpha$ を決めて剰余項の級数を小さく見積もれば、零へ収束しない場合であっても近似的に近い結果が得られます。今回はここまで。次回は、この方法を実際のデコンボリューションへ利用する際の注意点を考えましょう。(written by J.Nishigata)

研究20- 剰余項の級数の評価方法