通常、デコンボリューションの入力画像は RAW 現像された非圧縮画像が推奨されます。JPEG 圧縮のような不可逆なノイズ入りのデータを入力してしまうと期待通りの結果を得ることは困難になります。

我々のデコンボリューションは $\langle 1\rangle_k\mapsto\{\psi,\partial_r\psi\}\mapsto f$ という順序で画像を変換していきますが、この順序にはロジック上の必要性以外にも意味があります。

前半の環状項への変換部分はラプラシアンの冪級数によって実行します。すなわち、この変換は微分演算となっています。一方後半のヒルベルト変換の部分は、以前反転公式を求めたことからも分かるように積分演算で実行されます。

微分演算はノイズに弱く逆に積分演算はノイズに強いことから、環状項は不可逆に圧縮しても問題ないという結論が得られます。すなわち、RAW 側で環状項まで変換してしまえば、自由に圧縮して通信コストを抑えても受信側で効果的にデコンボリューション結果を算出することができます。

$\langle 1\rangle_k\mapsto\{\psi,\partial_r\psi\}\mapsto f$ という処理全体を RAW 側に実装してしまえば良いという安直な発想もありますが、この全体のフィルタサイズは径に依存して定数ではなくかつ大きい値も取り得ます。したがって、前半後半に分けて実装するというアイデアは非常に現実的だと思います。(written by J.Nishigata)

その他29- デコンボリューションと画像圧縮の絶妙な組み合わせ