PSF はその名の通り点光源の結像です。理論的にはこの概念は理解し易いのですが、現実的に考えると点光源は有限の物理的な大きさをもち、更に回折により結像のコントラストはあまり良くありません。

PSF を実験的に求めるためには、大きさを無視できるような被写体(蛍光ビーズ、レーザー光、北極星)を使う場合もありますが、もう少し気軽に調べたいこともあるでしょう。そんな時に登場するのが LSF と ESF です。

LSF(Line Spread Function) は直線の結像です。現実の直線は有限の太さをもつため、直接的に使うことはないのですが、ESF(Edge Spread Function) に関連付けて間接的に使うことは良くあります。

ESF は名前の通りエッジ、すなわちヘヴィサイド関数の結像を意味します。ESF から PSF を算出する手順を考えてみましょう。

\begin{align} \mathrm{ESF}(x^1)=\int_{-\infty}^{x^1}\bigg(\int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{PSF}(x^1,x^2)\,dx^2\bigg)\,dx^1 \end{align}

ESF を微分すると

\begin{align} \partial\mathrm{ESF}(x^1)=\int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{PSF}(x^1,x^2)\,dx^2=\mathrm{LSF}(x^1) \end{align}

これで ESF と LSF の関係が分かりました。LSF のフーリエ像を計算すると

\begin{align} \mathscr{F}(\mathrm{LSF})&=\int_{-\infty}^{\infty}\bigg(\int_{-\infty}^{\infty}\mathrm{PSF}(x^1,x^2)\,dx^2\bigg)e^{-2\pi ix^1y^1}\,dx^1\\ &=\mathscr{F}(\mathrm{PSF})(y^1,0) \end{align}

これで PSF と関連付けられます。エッジをとる角度を変えて同様に考えれば、スペクトル空間全体で $\mathscr{F}(\mathrm{PSF})$ を求めることができます。ちなみに、この LSF と PSF の関係式は投影定理と呼ばれています。

今回はここまで。次回は、簡単な開口関数に対して PSF を計算したいのですが、その準備としてベッセル関数の性質を調べます。(written by J.Nishigata)

光・波動30- PSF 関連の用語 LSF, ESF