ストーリー

アルシスデータの研究・技術にかける想いをご紹介しています。

画像鮮鋭化技術を情報化社会のインフラに。

ALXIS DATAの描く未来。

キャスレーコンサルティングの研究開発部門から画像解析技術の事業を受け継ぎ、2020年9月に設立されたALXIS DATA株式会社。

世界最高水準の画像鮮鋭化技術を搭載した画像解析ソフトウェア「Discovery V」を更に進化させた「RING」は、超高速での画像解析を可能にし、産業・医療・学術など広範な領域で扱われている画像データに対する高い実用性から期待を集めている。


この「Discovery V」「RING」の画像鮮鋭化技術を開発し、キャスレーコンサルティング時代から現在まで研究を牽引しているのが、ALXIS DATA株式会社取締役兼主席研究員である西形淳だ。


本インタビューでは、外部からインタビュアーを招き、西形の思考、ALXIS DATAの技術が持つ可能性と目指す未来、それを実現する組織の姿についての考えを聞いた。


ALXIS DATA株式会社 取締役 主席研究員 / CS 西形淳

画像鮮鋭化技術をあらゆる分野に提供していく

-ALXIS DATAの事業内容についてお聞かせください。

弊社では積分幾何学というツールを使って、画像の鮮鋭化というものを主に研究しています。

社名であるALXIS DATAのALXISという単語も、錬金を意味するalchimiaからとってきており、画像データをより完全なかたちに変換(画像の先鋭化)するという意味合いを持たせています。

画像鮮鋭化技術をあらゆる分野の用途に提供していくことをミッションの一つとしており、その後どういった使われ方をしていくのか、社会はそれによってどのように変わっていくのか、というところまでプレーヤーとして参加します。

根底にある思いは、未解決の光学問題への挑戦

-研究して終わりではなく、プレーヤーとして実装するところまでも担われるのですね。画像鮮鋭化技術の研究と実装になぜ興味を持たれたのか、きっかけはありますか?

きっかけの一つは過去にGoogle Earthというアプリケーションを使ったことです。Google Earthを操作するときに、非常に研究欲をくすぐられたという経験があり、そういった技術を開発したいという思いがそのときから芽生えました。


また、積分幾何学という分野が光学イメージング技術と親和性が高い、ということもあります。

高校生のときに幾何学における未解決問題集という本にチャレンジすることが好きで、そこから積分幾何学に触れていきました。現在の眼にも未解決の光学の問題があり、そうした問題を解決し、生命のレギュレーション、ハードウェアの仕様を改善したいという思いが根底にあります。

センサーに溢れた現代社会の中で、「RING」がもたらす革新

-画像鮮鋭化技術を用いた「RING」はどのような課題感から生まれたのでしょうか?

現在の時代背景として、とにかく高画素化というものが取り沙汰されています。

4Kだけではなく、5K、8Kと高画素化が進み、小型化も進む中で、画素のピッチ・サイズがどんどん小さくなってきています。また、われわれはセンサーに溢れた生活をしています。


1人1台スマホを持ち、インフラにもあらゆるセンサーが使われている中で、画像データが膨大になっているという状況があります。そこで大きく2つの課題が生じました。1つはレンズによって生じてしまう回折によるぼやけ。もう1つが計算量の問題です。


例えば防犯カメラ、バイオ関係でも4Kが使われるようになってきていますが、センサーの光学化で、どうしてもぼやけやすくなっています。さらに、肥大化した画像データを全てさばかないといけず、ここで計算量を圧縮するというところが、非常に大きな課題になっています。従来でもデコンボリューションという画像鮮鋭化技術はあったのですが、計算量が非常に大きいという課題がありました。

-そうした課題感の中で、「RING」はどのように課題解決をしていくのですか?

計算量という課題に対しては、既存のデコンボリューションはどうやってぼやけているのか分からない画像に対して、ぼやけ方を推定して、解析して、トライアンドエラーを繰り返すためループが生じて計算量が大きくなっていました。

一方、弊社はたった1回の計算で画像データから光学特性を算出することに成功しているので、計算量が劇的に減っています。この結果、競合が見つからないレベル、既存の技術よりも理論上100万倍高速になっています。


また、「DiscoveryV」は光学系の情報を入れないと動かず、ある程度仮定することが必要でしたが、全てのアルゴリズムを作り直した「RING」は、実際に使われる光学系がどういった特性を持っているのか分からない状況で使うことができます。

そのため、あらゆる光学系に適用できる可能性があります。高分解能化というところでも従来2倍改善することが限界でしたが、弊社では20倍というところを目標にしています。

パラダイムシフトを起こすということ

-非常に凄い数字ですね。社会に与えるインパクトも大きくなりそうですが、そうした課題解決の先にはどのような未来が待っているのでしょうか?

高分解能化ということで、様々なレンジやスケールのものに光学技術が使われる世の中になっていくのではないかと思っています。人工衛星の運用や、ナノテクノロジー、今まで小さくて見えていなかったから素材開発ができなかった分野に効いてきます。あとは生理現象的なウィルスの状態を見ることで、コロナのような課題に今後迅速に対応していくことができるのではないか、そういった社会を思い描いています。


そして、そうした未来の実現のために、弊社はパラダイムシフトというかたちで高分解能化の理論限界を超えていきたいと思います。これは非常に難しいところで、理論的にこうだから高分解能化できる、といった説明はできません。パラダイムシフトというものは実験データがまず先行してあります。そして実験データを説明するために理論を作っていくという工程になります。そこをしっかりおさえて認知度を上げたあとに、アプリケーションを拡散していきたいと考えています。

※パラダイム

トーマス・クーン氏が提唱しているパラダイム論の中で、パラダイムはその時代の真理というものを意味している。

光の測定のおいても今までの射影測定から、近年新しく弱測定という測定技術が確立されつつあり、理論的背景がまだ決まっていない。ALXIS DATAはそうした理論的背景が決まっていない技術を研究することでパラダイムシフトを目指している。

大切なのは理論とデータの両方を重視する姿勢

-そういったパラダイムシフトを目指していくには、ビジネスパートナーや一緒に働く仲間も大切になってくると思います。どのようなビジネスパートナーが多いのでしょうか?

大学が最も多いです。相手が企業ですと課題を見せていただくハードルが高いのですが、大学ですと例えば新しいものを開発したときに「機能が有効に働くかどうか確認してください」「新しい機能はどのようなものが必要ですか」等といったヒアリングもストレートにできます。

それに対するリアクションも使えないものは「使えない」とストレートに言っていただけるので非常にありがたいと思っています。

-そういった関係があるからこそパラダイムシフトに必要な研究・開発が進んでいくんですね。

最後に、これからALXIS DATAで一緒にパラダイムシフトを起こしていく仲間はどのような人物像が理想でしょうか?

専門性はあってしかるべきものですが、それ以上に学際性というものを重視しています。

例えば画像にも医療関係にも詳しい、という方だと課題をとってきやすいです。研究者は研究だけやっているわけではなく、お客様のところにいって課題を見つけてくる、技術営業という側面もあります。そういったかたちで動ける人が理想だと考えています。


私自身も数学のほかに、物理学を勉強したことが大きな強みになっています。

物理学の世界は非常に面白くて、理論が分かっていれば全て解決するようなものではありません。

実験でデータをとって、実験データをどのように解釈するのか、ということに理論が出てきます。理論とデータの両方を重視していくという考え方です。ビジネスにおいても、お客様のところでデータをとってきて、データにどのような意味があるのか、どのような背景でとったデータなのか、ということを詳しくヒアリングして弊社の技術に落とし込んでいく、という姿勢を重要視しています。


さらに言えば、会社のためにという意味合いではなく、外部環境に左右されないということが重要になってくると思います。自分本位で好きなことをやることが重要なマインドセットで、自分の興味を生み出す、というかたちで働くことができる人と一緒に仕事をしていきたいです。

トリリオンセンサーの時代を捉え、画像鮮鋭化によって未踏のマーケットを開拓しようとするALXIS DATA。

光学におけるパラダイムシフトで「これまでの世界を変革しよう」というエネルギーを感じる。


「Discovery V」「RING」といった画像鮮鋭化技術が未来を切り開く日も近いのではないだろうか。