以前、畳込みの定理をやりましたね。覚えていますでしょうか。

\begin{align} \mathscr{F}(K\ast f)=\mathscr{F}K\mathscr{F}f \end{align}

畳込み積分がスペクトル空間では単純な掛け算になる、というものでした。今回は、この定理の球面調和関数版をやります。

まず、畳込み積分の定義ですが

\begin{align} (K\ast f)(y)=\int_{\mathbb{R}}K(y-x)f(x)\,dx \end{align}

元の定義の $y-x$ の部分を内積に変更します。

\begin{align} \mathscr{K}f(y)=\int_{S^2}K(\langle x,y\rangle)f(x)\,dS \end{align}

では早速それぞれの関数を球面調和関数で書いていきましょう。$K$ をルジャンドル多項式で直交分解すると

\begin{align} K(t)=\sum_{k=0}^{\infty}\dfrac{N_k}{2}P_k(t)\int_{-1}^1KP_k\,dt \end{align}

更にルジャンドル多項式を球面調和関数の 2 次対称テンソルで書き換えて

\begin{align} K(\langle x,y\rangle)=2\pi\sum_{k=0}^{\infty}\int_{-1}^1KP_k\,dt\sum_{l=1}^{N_k}Y_{kl}(x)Y_{kl}(y) \end{align}

一方、$f$ はフーリエ級数で

\begin{align} f=\sum_{k=0}^{\infty}f_k,\ f_k\in H^k \end{align}

と書いておきましょう。以上で準備が整いました。畳込みを計算していきましょう。

\begin{align} \mathscr{K}f&=2\pi\sum_{k=0}^{\infty}\int_{-1}^1KP_k\,dt\sum_{l=1}^{N_k}\langle Y_{kl},f\rangle_2Y_{kl}\\ &=2\pi\sum_{k=0}^{\infty}\int_{-1}^1KP_k\,dtf_k \end{align}

スペクトルの次数ごとに因子(ファンク-ヘッケの因子と呼ぶことにする)が単純に掛け算で掛かっている様子が分ります。この定理は、ファンク-ヘッケの定理と呼ばれています。畳込みの定理とセットで覚えておくと非常に便利です。

今回はここまで。熱伝導の話題からスタートしたお話はこの辺で一区切りしましょう。登場した幾つもの道具(フーリエ変換など)は、本来の目的である熱伝導に適用するだけでなく、以後のあらゆる科学技術の便利ツールとなるものです。今後もいろんな場面で登場するので理解しておくと良いでしょう。(written by J.Nishigata)

フーリエ28- 球面調和関数版の畳込みの定理で積分変換を楽にする